機構レポート

「偽装請負問題」が、再びIT業界にやってくる

改正労働者派遣法案が閣議決定される

2015年秋、改正労働者派遣法案が可決されました。

改正派遣法はIT業界にも多大な影響が予想される、“特定労働者派遣の廃止”と

“専門26業務の廃止”が含まれています。

特定労働者派遣が廃止されると、一般労働者派遣の許認可取得を得なければ

派遣できなくなります。一般労働者派遣の許認可は一定水準の条件をクリア

しなければなりません。

詳しくは、“機構レポート:特定派遣廃止の影響とその対応について“をご覧

いただければと思います。

 

 

専門26業務の廃止は、これまで期間制限を受けなかったソフトウエア開発も

対象になりますので、派遣技術者が派遣先で業務に従事できる期間は原則で

最長3年となります。

このような法改正が、事業運営においてマイナス要因になるシステム開発会社は

多数存在し、派遣法の制約を受けない契約形態にシフトし、偽装請負や二重派遣

が再び増加する可能性が出て来ております。偽装請負や二重派遣は、製造業や

軽作業の現場を中心に摘発されてきた違法行為ですが、IT業界においても無視

できない問題です。数年前から監督官庁も今後IT業界に対して重点的に指導して

いくと明言(*1)しておりますし、法令違反企業は、実名報道だけにとどまら

ず、事業停止や担当者個人が懲役刑などの刑事処分に問われる事にまで発展して

しまう可能性もある重大な問題なのです。一時期、人材派遣業界最大規模まで

成長した株式会社グッドウィルも偽装請負・二重派遣がきっかけになり、

廃業に追い込まれました。

 

本レポートでは、偽装請負状態をどのように是正していけばよいかについて、

これまでのコンサルティング活動で培ってきた改善の方法をお話していきたいと

思います。またこの是正を有効に利用した人事・購買戦略や営業面の事業強化に

ついても言及したいと考えております。

 

偽装請負とは?

はじめに、契約形態の説明をしたいと思います。
会社によっては、請負や準委任を、法律と異なる言葉づかいをしていている場合が

ありますので、注意する必要があります。

(参考:各契約形態の説明)
偽装(各契約形態の説明)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いわゆる偽装請負とは、契約書のタイトルは請負契約または準委任契約として

おきながら、実質的には発注者(ユーザー企業)の指揮命令を受けて業務を

行うことをいいます。

 

重要な点は、

・請負、準委任契約:発注者が指揮命令してはいけない。

・派遣契約:発注者が指揮命令しなくてはならない。

ということです。

 

IT業界では、IT技術者の慢性的な不足から、下請け企業(パートナー企業と表現

されることが多い)となる中小規模のシステムインテグレーターやソフトハウス

から、人材を調達することが多くあります。

下請け企業も自社の人材だけでは要望に応えられないケースが多いため、さらなる

下請け企業から人材を確保しようとします。そうすることで、受発注構造が

どんどん多重化して、ゼネコン構造になってしまいます。なかには、5次請け

などの事例も見られます。

 

発注業務の範囲や成果物をきちんと決めて商取引を行えば、階層構造になって

いても違法行為とは言えませんが、実態としては業務範囲を確定せずに、労働力

の提供だけが目的とした契約(または実質的にそうなっている)になっている事

が多いようです。

 

こうなってしまうと、職業安定法第44条に定める“労働者供給事業の禁止”や、

労働者派遣法の“二重派遣の禁止”に抵触してしまう恐れがあります。上記の法令

は、労働者の指揮命令系統があいまいになることで労働環境が悪化することや、

中間搾取が行われて労働者に不利益が生じることを懸念して制定されたものです。

これに対応し、労働局も「請負の適正化のための自主点検表」を配布して

おります。ここでは、いろいろな条件が記載されており、何を重点にして対応

すればいいのか判断が難しいとの声をよく聞きますが、中心となる観点は

“労働者供給事業ではない”ということと“仕事の完成させる”ということです。

 

つまり、対策としてよく行われる“委託先企業のスペースには間仕切りをする”と

いったことや、“社名の看板を作成する”ということは、上記の2点に関係してくる

ものなのです。しかし、こういった目に見えるわかりやすいところに意識が集中

してしまうことは仕方がないのですが、形だけ合わせても、本質的なところが

対応できていなければ意味がないことになってしまいます。

 

*1 明言
2006年度以降実施の請負・派遣適正化キャンペーンで、対象業界として情報サービス産業(IT業界)が明記されました。

 

2006年の派遣法改正が、偽装請負を表面化させた

IT業界での偽装請負問題は、近年、急速に表面化してきました。

2006年に大手ITベンダーがシステム運用の案件で労働局から是正指導を受け、

インターネットや業界誌でも実名報道がなされました。このプロジェクトでは、

このベンダーからプロマネが出ており、他は複数のシステム会社の技術者で構成

されていました。ベンダーとそれぞれの会社との契約形態は準委任契約でしたが、

実際には業務の範囲が不明確で、プロマネと他の技術者の間に直接の指揮命令が

発生していたと認定されたようです。こういったケースは頻繁に起こりがちで、

他にもいくつかの企業が類似した事例で是正指導を受けています。
そんなことから、現在では、いくつもの大手ベンダーが、パートナー企業向けの

説明会を実施したり、ガイドラインを策定したりなどして、問題の是正に力を

入れ始めているのです。

 

では、かつては当たり前であった、こういう契約形態が、なぜ問題視される

ようになったのでしょうか?

ターニングポイントは人材派遣法の改正です。

派遣法はさかのぼること約20年前の1985年に成立しました。成立当時は、

派遣は正社員の代替手段ではないとの考え方から、高度で専門的な知識や経験を

要する“13の業務だけ”が派遣として認められていたのです。(*1)

また、その翌年には「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に

関する基準」(労働省告示第37号)が公表され、現在に至るまで派遣と請負の

区分の基準となっています。

(*1)派遣適用対象業務
対象業務も徐々に見直しが進み、86年には16業務に、98年には26業務が対象となりました。

 

当時のIT業界では、上記の区分基準では判断が難しく業務に支障をきたすという

懸念から、社団法人情報サービス産業協会(JISA)が業界運用基準を取りまと

めて行政側に提出するといったような動きがありました。

ただ、このころはIT業界の規模もまだ小さく、労災問題も現在ほど表面化して

いなかったので、大きな問題として取り上げられることはありませんでした

その後、2004年に派遣法が改正されて、製造業務への派遣が解禁になりました。

このころから偽装請負問題が表面化します。

製造ライン等での請負契約に、直接の指揮命令が発生する職場が多く見られた

ため、労働局は関係する発注者やサプライヤー(請負会社、派遣会社)に派遣

と請負の適正な理解を促す取り組みを開始しました。これが、毎年秋に実施

されている契約適正化キャンペーンの始まりです。

 

このキャンペーンで製造業を中心に調査したところ、違反率は80%を上回る

高い率でした。あわせてIT業界に対しても同様の調査を行うと、多数の違反が

発見され、重点的に是正が必要な対象業界という認定がなされたわけです。

おりしも技術者の圧倒的な不足から労働強化がなされ、労働災害も目に付く

ようになっていました。とくに実態は派遣でありながら、形式的には請負である

偽装請負となると、労務管理がおろそかになる傾向があり、業界としても偽装

請負問題は、取り組むべき緊急の課題という認識が広がったのです。

2015年9月に法改正され、特定労働者派遣と専門26業務が廃止となれば、

再び大きな混乱と行政による是正指導が予想されます。

 

契約適正化の流れを、事業モデル転換のチャンスに!

昨今は偽装請負の問題が広く知られるようになり、自分は偽装請負に加担して

いるのではないか?と労働局へ問い合わせる労働者も増加しています。

早急に是正しなければ、コンプライアンスの不備を問われることはもちろん、

技術者の採用・維持に関しても、影響が出てくることになるでしょう。

これまで、IT業界は仕事の完成基準があいまいなまま、技術者ひとりの労働力を

単価として換金化し、いわゆるグレーな部分が存在する“派遣型の人月ビジネス”

が中心となっていました。

 

日本にある数万社のシステム開発会社のかなりのビジネスが上記の形態に該当

すると思われます。しかし、これからは、偽装請負の適正化の観点から、単なる

労働力の提供型のビジネスモデルでは、継続が困難になっていくでしょう。

むしろ、この業界構造の変化をチャンスにとらえていかなければいけません。

是正のポイントは、①直接取引化と ②高付加価値化の2点です。

 

まず ①直接取引化は、偽装請負の温床となりやすい階層構造の下部での取引

から、よりエンドユーザーに近いレベルでの直接取引を目指して営業活動を実施

するということです。こう言うと当たり前のことのようですが、これまでは本来

は直接取引できる力があるにもかかわらず、下請けの立場に甘んじていたという

ことはないでしょうか?より直接的な取引化が図れれば、偽装を気にすることも

なく、単価の向上やより安定した取引が見込めるようになります。
②高付加価値化は、これまで技術者の能力に依存していた事業を、単なる労働力

の提供と取られないように、業務範囲を明確にし、自分たちの力で納品、運用

できるように、事業そのものを高付加価値化し、違法性のないクリアな内容の

請負・準委任に進化させるということです。人出しビジネスと訣別し、自力で

納品、運用できる力をつけることはハードルの高いことだとは思いますが、

その過程の中で、自社の強みは何かを検討し、高い品質管理基準を設定する等

の努力をしてはじめて、真に独立した企業として成長できるのです。

 

以前、労働局主催情報サービス業向けの契約適正化キャンペーンのセミナーで、

労働局の方が語っていた言葉は印象的でした。

「最近、偽装請負問題の解決策からか、システム系の会社の派遣免許の取得が

急増しています。たしかに、派遣への切り替えは手段のひとつです。

ただ誤解されがちですが、労働局は請負・準委任契約をダメと言っているわけ

ではありません。むしろ、請負の概念をしっかり理解していただき、高い付加

価値を持って提供していただくことを期待しております」

 

今後は、“人が欲しいのか”、“付加価値のある完成物やサービスが欲しいのか”

の選別がより明確に行われるでしょう。

前者は派遣契約で対応し、後者は請負・準委任で対応することになると思います。

そのような環境の変化を考え、それぞれの会社にあった独自の戦略を実行する事

が求められてるのです。

【記:代表理事 小林 亮介】

 

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