機構レポート

特定派遣廃止の影響とその対応について

2018年秋の特定派遣の廃止猶予措置の終了が目前となりました。

専門26業務の期間制限撤廃も含まれています。

これによってどのような変化が発生し、どのような対応が必要なのかを考えて

いきたいと思います。

 

一般派遣と特定派遣の違い

まず、はじめに派遣事業には、一般派遣と特定派遣の2種類が存在します。

一般派遣は派遣先が決定した際に派遣会社との雇用契約が発生するという

形態です。多くは事前に派遣会社に登録して、お仕事の案内を受けるという

流れになります。

一方の特定派遣は、派遣会社(所属会社)との常時雇用が条件となっており、

雇用関係が安定しているという観点から、規制がゆるやかな届出制になって

います。

 

ところが、IT業界や製造業の技術者派遣で、特定派遣契約は常時雇用が条件の

はずなのですが、契約社員という名目で3ヶ月単位などの有期雇用契約を繰り返す

という行為が横行するなどして、派遣労働者の立場がむしろ不安定になっていると

いう指摘が多く、今回の見直しにつながったようです。IT職種での一般派遣は

4万人、特定派遣は6万人従事していると言われています。

 

一般派遣事業における許認可取得の要件

特定派遣事業廃止に伴って、一般派遣事業の許認可をさっさと取得すればいいの

では?と思われる方も多いと思われます。しかし、一般派遣は派遣先が決まって

から雇用契約を締結するという雇用不安定さから、事業者には取得の要件が課せ

られており、簡単ではない面があります。

 

主な要件としては、

 

①    貸借対照表での資産が2000万円×事業所数以上あること

②    現金・預金の額が1500万円×事業所数以上あること

③    雇用管理経験を3年以上もつ派遣元責任者の配置

④    20平米以上の広さがある事務所(暗黙値ルール)

 

があげられます。

 

 一般派遣の許認可取得が困難な中小規模システム会社

IT業界の中小規模システム会社において、上記の要件が厳しいという声はよく耳

にします。発端はリーマンショックを契機とした外注技術者の契約打ち切りです。

当時は多くの中小規模システム会社で雇用している社員の仕事がなく、社内待機

状態となり、国の補助金を受けながらなんとか切り抜けたという事があったから

です。それから数年立っていますが、需要が持ち直した現在でも下落した単価は

元の水準に達しておらず、貸借対照表が傷んだままという会社は多く見られます。

 

再び浮上する“偽装請負”問題

それでは、実際に特定派遣が廃止されると、どうなるのかを考えていきたいと

思います。まず、はじめに想定されるのが、偽装請負の問題です。IT業界では、

民法656条に規定されている準委任契約に基づき、客先に常駐して開発を行う

商習慣が一般化しています。

 

偽装請負とは、契約書上は準委任契約としておきながら、実際には発注側の

指揮命令を受けて業務を行うことを言います。職業安定法第44条に定める

“労働者供給事業の禁止”や、労働者派遣法の“二重派遣の禁止”に抵触します。

人材サービス大手だったグッドウィルは偽装請負が端を発して廃業に追い込ま

れました。上記の法令は、労働者の指揮命令系統があいまいになることで

労働環境が悪化することや、中間搾取が行われて労働者に不利益が生じること

を懸念して制定されたものです。

 

労働局の数年間の取り組みで、IT業界内に偽装請負に関する認識が浸透し、

グレーな準委任契約がだいぶ減少しました。しかし、今回の特定派遣の廃止を

きっかけに、一般派遣の許認可を取得できない会社が増加することで、偽装請負

が再び常態化し、技術者の労働環境が悪化してしまう懸念も生じています。

そうなると、新卒を始めとした就職市場からのIT業界離れがさらに加速し、

エンジニア不足に拍車がかかってしまいます。

 

一般派遣が取得できないとどうなる?

これまで顧客と特定派遣契約を結んでいた会社が、一般派遣許認可を取得できな

ければどうなるのでしょうか?解決策は、準委任契約で締結してもらう、もしくは

契約を終了するしか方法はありません。しかしながら、多数の技術者の受け入れを

している派遣先企業では、数年前に偽装請負のコンプライアンス対応を行った際

に、既存の準委任契約をすべて一般派遣契約もしくは特定派遣契約に切り替えた

というところも多く見られます。顧客がこのようなタイプの会社だと、一般派遣

許認可が取得できないという事態はこれまでの売上がゼロになってしまう可能性も

あるので深刻です。経営の存続すら危ぶまれてしまいます。

 

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