テレワーク開発の最前線インタビューvol.1

株式会社ビジネスバンクグループ
代表取締役社長 浜口隆則様
(聞き手:ニアショア機構代表理事 小林 亮介)

レンタルオフィスという事業モデルを世に広め、現在では「日本初の中小企業向けクラウド型ERPサービス【ALL-IN(オールイン)】を開発、提供されている株式会社ビジネスバンクグループの浜口様にお話をお伺いしました。

経営を安全にする道具を提供したいという想い

−− ALL-INを開発された背景と想いをお伺いできますか?

浜口: いくつか理由があるのですが、一番大きいのは起業をする人を増やしたいという事があります。開業率を10パーセントに引き上げますというミッションを持って21年目なのですが、5年くらい前にこんなに環境がよくなっているのに、なかなか開業率上がらないのはなぜだろうと思った事があります。いろいろ考えた結果、大きな課題があることに気づきました。要は実際に起業をして経営を行った人が、いっぱい失敗しているんですよ。そんな失敗している姿とか苦しんでいる姿を見たら、さすがに新しくやろうと思わないじゃないですか。小林さんや僕らが日々辛そうにしていたら、誰もそれをやろうとは思わないですよね。でも、実際はそういう状態だってことなのですよね。たくさんの会社がつぶれていくので、どうすればつぶれなくなるかとなったら、2つの結論になりました。

ひとつは経営者が経営のことを知らないといけないという事と、もうひとつは経営者や中小企業が、もっといい道具を持たないとだめだという事です。スポーツにしても音楽にしてもなんでもそうだと思うのですが、道具によってパフォーマンスって、かなり変わるじゃないですか。たとえば、私はずっとテニスをやっているんですけど、ラケットって変わってないように見えて、めちゃくちゃ変わってるんですよ。なので、今の錦織選手は、昔のラケットだとあんなふうには絶対打てないのです。パフォーマンスはラケットの進化によっても支えられているのです。

−− あれもカーボンですよね。

浜口: カーボンです。昔は本当に真ん中に当てないとボールって飛ばなかったんですけど、今は当たったら飛ぶ範囲が大きいんです。ある程度どこに当たっても、けっこう飛んだりするので、それでああいうテニスができるようになっています。それと一緒で、人間は結局道具によって進化してきたので、経営も道具によって進化するべきだと思いました。今の世の中の道具って何かなと思ったときに、システムしか考えられなくて、中小企業にシステムを提供しようというのが始めた経緯となります。

−− 確かに自分で事業をやって思いますけど、わからないことだらけですね。たとえばお金について、いくら手元にあれば安全なのか、投資のセンスとか。投資ってなんか怖いじゃないですか。みんな怖いけど、やらないと大きくならないとか。読書ではカバーできないところはいっぱいありますよね。

浜口: そういうものを伝えていく部分と道具があれば、経営って活動そのものが安全になっていくのではないかと思っていて、その安全率が高まらない限り、プレーヤーは増えないと考えています。

はじめてのシステム開発で試行錯誤

−− ALL-INの開発はいつ頃から着手されたのですか?

浜口: ひとりのエンジニアから始めて4年弱ですね。2016年の4月に、ミニマムバリューはできたと思いリリースしましたが、3カ月営業活動をしてみて、機能面でまだ足りないという判断で、そこからは1年程プロダクト強化に力を入れてきました。

−− 現在の開発体制といわゆるテレワーク開発の状況について教えていただけますか?

浜口: 開発はQA等も含めて全部で12人くらいです。外部の方がおよそ半分です。テレワーク開発は2年前くらいからです。自社の社員も火曜日と木曜日は自宅オーケーにしているので全体的にテレワーク開発を普通に行っています。生産性をどうあげていくかの仮説を作っていろいろ検証しています。

−− 実際テレワーク開発を行ってみて、うまくいっていますか?

浜口: 最近のツールはすごくよくできているのが出ていますし、環境は作りやすいですね。基本的にはJIRAでチケット管理をして、スプリントを回しています。Gitも使っています。
マネジメント側で心理的に自分のそばに置いておきたいという事がない限りは、エンジニアの仕事はある程度の単位に分けやすく、成果も見やすいので、やりやすいとは思いました。フルで全部テレワークにするのは効率が悪い可能性もありますけど、半分くらいだったら効率がいいのかもしれないと感じています。

−− セキュリティについて気にされているところはありますか?

浜口: セキュリティは強く意識して開発環境を作っています。でも悪意があれば社内含めどんな環境でも流出はできてしまいます。本当に厳密なところで言うと契約にペナルティを明記するなどでカバーするしかないと考えています。

−− コミュニケーションツールはどうされていますか?

浜口: Web会議システムは、ハングアウトやappear inを使ってやっています。あとはslackですね。

−− 開発チームの始業が朝7時とお伺いしました。

浜口: あれは1回やめました(笑)。今は10時からになっています。朝早いのもよかったのですが、どちらが新規にエンジニア採用しやすいかという議論で10時という結論になったので、時間を変更しました。ただ、また7時からになる可能性もあります。朝礼も毎日やっています。火曜日と木曜はテレビ会議でやってます。なるべく1日1回みんなで、テレビ越しであろうと顔を合わせるようにはしてます。ひとり必ず1分話すように設計しています。

生産性が測れれば場所は関係なくなる

−− 最後にテレワーク開発の可能性についてお聞かせください。

浜口:エンジニアの方は比較的自律的な人が多い印象なので、社内で一緒にいなくてもやっていけると思います。あとは成果ベースで見れば、場所は関係ないと思っています。むしろテレワークみたいに割り切るほうが、業務の実際の成果で評価しなければならないインセンティブが働くので評価が正しくなる、鋭くなってくると思います。
そういう意味では、生産性を測る道具があれば最高です。投資した1円あたりに見合う開発をしているかがわかるものがあれば、本当に場所は関係なくなります。現時点でそれ以外の道具はWeb会議システムも低価格でできますし、チケット管理も容易にできるようになっているので、生産性が見える化できればすごくやりやすくなりますね。一気にテレワーク活用は進むと思います。

−− 貴重なお話をお伺いさせていただき、ありがとうございました。