レベニューシェア型契約の留意点
ここ数年で新しく見かけるようになった契約形態として、発注側と受託側で将来発生する売上や利益を分配することを条件に発注側のシステム初期投資を抑える、いわゆるレベニューシェア型契約があります。発注側のIT化ニーズが、従来のような基幹システムから売上拡大および事業創造に方向性が変化している潮流を示しているとも言えると思います。受託側のベンダーも、労働集約型ビジネスからの脱却策のひとつとして、関心を持っています。
ただし、レベニューシェア型契約には、留意しなければならないポイントがあり、その多くはベンダー側に経験が乏しい、もしくは苦手としている領域なので、注意しなければなりません。
それでは、留意すべきポイントを確認していきたいと思います。
① 役割・責任分担の明確化
実行すべき項目を洗い出して、どちらが責務を負うのかを明確に定義することが成功への重要なポイントです。曖昧なところがあれば後々トラブルにつながります。
レベニューシェア型の契約=なんらかの売上が発生するシステムなので、当然ビジネスモデルが存在します。ビジネスモデルの検討と確立は成功のカギを握る重要な要素になりますので、両者でしっかり協議する必要があります。よくあるケースとしては、受託側のシステム開発会社にその分野の業務知識がないので、先方の案をそのまま採用するということがありますが、この段階でしっかりリスク査定をしておかないと大変な事につながりかねません。
他に問題が発生しやすい点として、集客プランの策定と実行はどちらが責任を持つのか、Webコンテンツの作成や運用はどちらが担当するのか、情報漏洩等のセキュリティ事故発生時の対応と責任範囲の定義という事が挙げられます。
② 事業シミュレーションの策定と裏付け
事業を開始する際に、どれくらいの売上と利益が見込めるのかのシミュレーションを作成すると思いますが、皆さんもご存知のように計画通り数字が推移することはほとんどありませんので、なおのこと注意が必要です。シミュレーションの妥当性を判断するポイントとしては、数字を達成するための営業・マーケティング施策がひとつではなく複数存在しているか?代理店活用など他力本願になっていないか?という観点で検証することは非常に効果が高くおすすめです。数字の根拠を徹底的に議論することが、取るべき施策のブレーンストーミングにもなり、事業の網羅性を向上させます。
③ 契約条項の検討
著作権の有無や競業避止条項は基本的な要素ですが、レベニューシェア型契約の場合、途中でビジネスがうまく推移せずに終了する可能性もありますので、最悪のシーンを想定して協議する必要があります。
また、収益分配率の設定はもちろんですが、その前提となる売上計上が両社で確認でき、不信感が生まれないような業務フローにすることも重要です。
事業シミュレーションと合わせて、主要なKPIの策定と達成されない場合の取り決めや対応策も盛り込むとより良いでしょう。
●成功の秘訣
最後に、レベニューシェア型契約を成功させるために最も重要なことは、“双方のやる気と信頼関係を高いレベルで維持することができるか?”という事に尽きると思います。
月額費用を取らずに収益分配率を高めに設定するという例も見受けられますが、ゼロ円だと本気にならない可能性がありますし、責任も感じにくくなります。受託側は月額費用を少しでも構わないので、必ずいただく事にしてください。
レベニューシェア型契約はリスクも伴いますが、多くのメリットも存在します。今後も増加していく形態であると思われますので、早い段階から着手しておくことが望ましいと考えます。
【記:代表理事 小林 亮介】
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